働かないのではない、働けないのだ

2020年9月4日 晴れ時々曇りたまに大雨 24/33℃

 ゆうべは年に数回訪れる、暑くて寝苦しい夜だった。今夜は幾分過ごしやすい。

 日中は暑い。カラカラの35℃よりシケシケの30℃がつらい。ダラダラと汗が流れるのが耐えられない。ブヨ、アブ、蚊が少なければ半袖半ズボンでNO作業するんだけど、ブヨ、アブ、蚊は大変多いのだよね。ブヨ、アブ、蚊! Joanna NEWSOM の”Peach, Plum, Pear”と通じるものがある。

 ついこの間から、廊下の壁が天井とぶつかるあたりに、狩り蜂のグループがふたつ、たかっている。ひとつはドロバチの巣のまわり、もうひとつは垂木の節のまわり。はじめはここに巣を作りに来たかと驚いたが、蜂たちはひとところでじっと動かない。女王蜂もいないようだ。

 ははあ、これはカラカラ天気続きの時に雨仕舞いを考えないで作った巣が豪雨に叩き落とされて一族離散、そのうちの一部が逃げて来たんだな、と思った。巣作り担当蜂がまじっていないから新しい巣を作る、という発想にならないのだろう。それにしては餌を探しに行くでもなし、ほとんど微動だにしない。だいたい、巣作り担当なんてあるんだろうか。働き蜂は百姓並みになんでもやるんじゃなかろうか。

 ははあ、そうか、これはよく聞く「巣の中に一割いる働かない働き蟻」の蜂バージョンだな、と思った。仲間(というか姉妹?)がせっせと稼いでくる食糧のおこぼれ(この頃はトリクルダウンというらしい)をあてにして手前は遊んで暮らしている、タダ乗り派の奴らだ。女王を先頭に一族郎党、御家再建に汗を流して(蜂が汗をかくのは見たことがないが。お尻から水滴を落とすのはよく見たり浴びたりする)いる間、雨の当たらないところで知らん顔してる不届き者たち。

 しかし、じっと動かないのだよね。働かない、というよりは働けないのではないかな。働かない働き蟻(蜂)だと?フリーライダーだと?労働者階級はあくせく働いて私たちの優雅な生活を下から支えてくれなくちゃ困る、といった高等遊民の発想じゃないか。もっと謙虚な気持ちで彼らの声を聴こう。

「働き蜂とか女王とか、人間の物差しで色分けされるのは耐えられない。わたしは働き蜂である前に一匹の蜂でありたい。一匹なのにハチ、なんちゃって」

また曰く、

「蜂は蜜のみにて生きるにあらず、いえ、私は狩り蜂ですから蜜よりイモムシの肉団子とかそういうのを普段頂いてまして、蜜ってのはその、いわゆるメタファーって言いますか、食べ物ですとかお洋服ですとか、いえ、普段はお洋服も着ませんけど、オホホホ」

 ともあれ、俺はそんな彼らの思いにそっと寄り添いたい(下手に寄り添うと刺されたりつぶしちゃったりするから)。彼らをよっく見てみろ。路地裏でバックレてるというよりは路頭に迷ってる感じじゃないか。手助けできるものならしてやりたい。俺だって、己の存在の揺らぎを彩るところの路頭に迷うバージョンのパラレルワールドはひとつふたつじゃないからね。おい、君たち、どうしたんだい、なんか欲しいのかね?

・・・無視(虫)。