のらの季節

春だ。朝から蕗の薹集めに精を出す。この冬は湿った雪が多かった。長いこと厚い雪に覆われていた植物はいつもの春よりなんだか平たい。フキノトウもぺちゃんこのが多い。ぺちゃんこでも風味は変わらない。こいつを食べるとからだが春に向かってグルグル動き出す。

野良仕事、ではないな。野良遊びだ。おんなじようなもんだけど。

冬水田んぼにはいつのまにかカエルの卵がいっぱい。誰か、水の中を泳いでいくやつがいる。魚っぽい。

夜、お風呂で種籾の温湯消毒。60℃だからお風呂の感覚では熱湯に近い。

籾を水の盥に放って浮いたやつを掬い取る。ほんとうは塩水でやるらしいが、塩がもったいないし排水に困るから真水を使った。ちょっと水を動かすと際限なく浮いてきてしまうので、適当にやる。

ササニシキ1kg、ミヤギコガネ糯500gを、500gづつ網袋に入れて60℃の浴槽に浸けること10分で作業終了。と、タイマーに使っていた俺の携帯を見た生き物係さんが、この世の終わりのような悲鳴を上げた。「なんで10分なの!5分でしょう!?」焦って参考書をめくると、確かに5分とある。記憶違いだったか、60℃10分という頭があったのだ。文明の利器、Webサイトに頼ることにする。あった。温湯消毒を説明した多くのページが、60℃10分としている。ただし、糯は少し短めがいいらしい。それで、ミヤギコガネだけ再度500g、今度は5分浸ける。手間は掛かったが、温湯消毒の時間と発芽率の相関についてのデータが採れる訳だ。これは言い訳だ。10分の5分のという数字なんて十進法に囚われた発想だよ、などとうそぶいてみたが、すっかり不機嫌になった生き物係さんは、ソルマックの焼酎割を飲んでいた。

春とはいえ、夜はまだまだ冷える。そろそろお風呂のお湯も落ち着いた頃だから、籾湯に入って寝るとしよう。