About Golgi Worx

06.02.2011

 ゴルジ工房は、芸術的非芸術を標榜する、「芸術のようでいて芸術ではない」活動を行う集団。小野一佳(*1)と 林貞之が1989年に結成。初期はダンスパフォーマンスの作品発表を中心に活動してきたが、93年ごろから小野がダ ンスを突然休止する。その後、林とその愉快な仲間たちが主体となり、活動を続けているが、林の作品発表自体は減少 した。
 理由として、小野の休止という環境のほかに、当時「芸術のようでいて、まさに芸術ではない」作品群、更には 「芸術のようでもなければ、やっぱり芸術ではない」作品群等、ゴルジ工房のコンセプトを遥かに凌ぐ全くもって 素晴らしい「面白ければ、それが正しい」という直接的な解釈による非芸術作品が、複数のダンスカンパニーから 多数発表されるようになり、林はダンス活動は続けていたものの、作品創作に関しては、しばらく「ぽつねんとし た状態」が続いた。
 その後、ゴルジ工房は「五ヵ年計画」を発表。
五カ年計画(ごかねんけいかく、ロシア語:Пятилеткаピチリェートカ)とは、一般的には、政府及び地方 自治体、あるいは各企業・団体が経済運営や事業計画について、5年の期間で達成すべき目標とその手法について 定めた長期的な計画の事である。特にその中で、ソビエト連邦が重工業中心の工業化及び農業の集団化(コルホー ズ)に関して逐次作成した、5年間に渡る長期計画の事を指す場合が多い。(以上,Wikipediaより)
 ゴルジ工房の「五ヵ年計画」とは、上記の直接的な芸術的非芸術を再解釈し、新たな非芸術を構築する試みであ ったが、抽象的な概念からダンス作品の具体化へのプロセスに膨大な時間がかかるために苦労することとなる(いや、本当に苦労したのはその「プロセス」に付き合ってくれた稀有なダンサー達だろう)。
 芸術的非芸術というのは、何らかの「作品」つまり「芸術」といわせるまでの何かを匂わせながら、その実何も ない肩透かし、つまり「非芸術」状態まで突き落とす作業である。プラスとマイナスの綱引きをお互いに負荷を掛 けながらその実引っ張り合うその綱が外側から見て何も動かない状態を指すものともいえる。それらの拮抗してい る状態を、ダンスでの表現に当てはめてしまうと、最終段階には、何も動けなくなる。完璧な拮抗状態を目指して しまうと、そのようになりやすい。そのため「作品」の中の体の動きそのものについてのプラスとマイナスの概念 を捨てなければならないが、ダンスは体の動きそのものが必要だという、まったくもってダンスコンポーザーとし ては打つ手がないスパイラル状態を感じることになる。あたかも奈落の底にいるような・・・。
 そんな理由もあって、芸術的非芸術の再解釈過程において、活動内容から「ダンス」という枠組みを外した。そ のことが「五ヵ年計画」の最大の成果だ。以上の経緯から2004年ごろからダンスにおいての林の関心が「作品 」から「即興」へ移ることとなる。林の最近のダンスに関連する活動としては、「即興性」とそのときどきの関係性を 重視したワークショップ、コンタクト・インプロヴィゼーション・ジャムの開催等を行っている。「作品」という 形式ではない、心と体の関係性など、個々の表現者が互いに引き合いかつ反発しあう磁極のようなものが時系列上 で、もみ合いせめぎあう状態の時々のプロセス「即興」が身体表現に於いての、芸術的非芸術という概念にぴった りと重なることを発見したのだろうと推測できる。
 一方で林は、手作りパン工房の乗っ取り事件や、雑司が谷実験農場の開拓など、およそダンス作品とは程遠い、 パン、野菜などの作品を制作。とりわけ雑司が谷実験農場での成功から、土・昆虫・細菌・天候という多様な関係性 に興味を持ちライフワークとして考えているらしい。尚、2010年6月、雑司が谷実験農場は金融資本主義社会の歪みに押しつぶされ、閉鎖した。
現在、実験農場の活動拠点となるべき新天地を夢見て、都内某所に潜伏中。

注記/備考

  • (*1) 2003年に突然ダンス活動を休止した小野は、IT技術と掴み所のない話術を駆使して経営者として活躍を続け る傍ら、微妙なキーのズレ、まるで噛合わないグルーヴを特色とする「グレイ・ノート」という新分野を切り開い た「松澤バンド」のパーカッショニストをつとめている。依然、ダンスに復帰する気配はない。